交通事故で車両被害を被った場合に、保険会社は修理費の分はすんなり払ってくれると思います。
しかし、修理をすれば完全に元通りというものではありません。
車の外観や機能に欠陥が生じることもあるでしょう。
また、こういった事故歴・修理歴があると、事故車(修理車)として扱われることとなり、将来下取りや売却の際に
価格価値が下がってしまうでしょう。
この下落した価格の部分を評価損(格落ち)といいます。
被害車両が全損の場合は評価損は請求できません。
評価損とは、修理歴によって価値が下がったことによる損害です。
あくまでも「修理」が前提ですので、全損の場合には評価損は請求できないのです。
過去の判例においては、車が修理され機能、外観に問題がなく、その車に乗り続けるのであれば現実に
損害が発生しているわけではないので、評価損は認めないという考え方が大勢でした。
ただし、現在の傾向としては、むしろ認められる判例が多い傾向にあります。
①修理費用を基準にして評価損を認めた事例
修理費用を基準に評価損を認めた方法。
評価損の割合は最低は修理費用の10%を認定した判例から、15%、20%、30%、35%、40%、50%の
修理費用を評価損と認定した判例があり、その基準は車両の状態などの事情により多岐に分かれますが、修理費用の
30%を評価損と認定する判例が最も多いです。
②車の時価を基準にして評価損を認めた事例
事故当時の事故車両の時価を基準に算定した方法
時価の10%を評価損と認定し、評価損金7万7,655円及び修理費、金27万円の支払いを命じました。(大阪地裁判決S48.6.8・交通民事裁判集6巻3号988頁)。
③金額表示して評価損を認めた判例
被害車両の種類、試用期間、被害の内容・程度、修理費用等の諸般の事情を考慮して金額を示す方法。
新車登録後2ヶ月のベンツの事故車両の修理費、金54万6,796円に対して、評価損として金25万円を認定しました。
(大阪地裁判決H.5.8.27・交通民事判例集26巻4号1089頁)
④財団法人日本自動車査定協会等の査定等を考慮して評価損を算定した判例
■財団法人日本自動車査定協会の評価損査定額を考慮したもの
高級車キャディラックの修理費用、金315万円に対して財団法人日本自動車査定協会の評価損査定額、金35万3,000円
を評価損として認めた判例があります。(神戸地裁判決H.11.1.27・交通民事判例集32巻1号198頁)
これに対して、高級車セルシオについては、財団法人日本自動車査定協会の損査減価格、金51万5,000円は、
評価過程が明らかでなく十分な根拠がないとして認めず、修理費の20%(金33万2,028円)を評価損として認定しました。
(東京地裁判決H.10.10.14・交通民事判例集31巻14号1523頁)
■中古車買取業者の評価算定式を考慮したもの
初年度登録から3年半経過後の事故車両で10万キロ程度走行した、車両の修理費、金103万1,016円で、修理をしても
ドアの歪みが残る、高級車シーマについて、中古車買取業者の評価損算定式を考慮して、金40万円の評価損を認定した判例があります。
(さいたま地裁判決H.19.8.3・最高裁ホームページ)
評価損をめぐる判例では、修理費の一定割合を評価損とするものが主流で20%~30%が認められる例が多いです。
中には高級車等で50%認めた例もあります。
また、判例では評価損は新車のみならず中古車の場合にも認められるべきものであるとし、
さらに車(国産車・輸入車)だけでなく、バイク(2輪)にも評価損が認められた事例がありますので、
バイクに乗っていて事故に遭われた方にも、評価損の賠償を検討してみる余地はあると思います。
一般的には加害者と直接交渉するのではなく、相手の保険会社と交渉する場合が多いと思いますが
保険会社の対応は非常にしぶいといわざるを得ません。
よくある事故担当者の話法では、
「保険会社では普通、修理代金と代車費用しか払えません。」
「新車でないと認められません。」
「現在の修理技術ならきれいに直ります。」
「乗りつぶせば、事故があってもなくても関係ありません。」
など、保険会社が評価損について、すんなり認めようとはしません。
保険会社も営利を目的にしているのですから利益を減らすということはしないのが通常です。
保険会社側も評価損を断るテクニックの習得に余念がありません。
例外的に認める場合でも、
新車登録から6ヶ月までの車、外観や機能に不具合の残る車、事故前に(下取りなどの)売買契約があった場合などと
極めて限定的な対応をとっています。
たいていの保険会社では社内の認定基準を作っており、「決まっています!」と一方的に事故の被害者に押し付けたりします。
また、多くの判例の中から、保険会社にとって都合のよい判例1つだけを取り出し、あたかも「裁判で決まっている。」と
威圧する交渉をする事故担当者もいます。
評価損について、保険会社から交渉で勝ち取るのは至難の業です。
損害は被害者側から立証しなければ、保険会社からは何もしてくれないということを認識してください。
そこで、当事務所は評価損獲得の手順、要諦書およびアドバイスにて、事故車評価損の損害金獲得までサポートいたします。
※評価損は初年度登録からの期間、走行距離、損傷の部位・程度、事故車両の人気等などを個々の事情が考慮されますので、
全てが認められるわけではありません。
費用負担に関して、自動車保険の特約である「弁護士費用等特約」を使用できる場合があります。
加入されている保険契約の内容をご確認ください。
ご家族の保険に付されている特約も使用できる可能性がありますので、一度ご家族全員の保険もチェックしてください。
この特約は、事前に保険会社の同意を得た上で、当事務所に依頼する「相談料」、「手続費用」の一部または、全部を
特約により補填することが出来る場合があります。
これにより、お客様の費用負担が、保険使用により0円になることもございます。
弁護士費用等特約については、通常の保険使用と異なり、等級が下がることがなく翌年の保険料に影響しません。
自賠責保険における損害賠償、慰謝料、過失割合、後遺障害、むち打ちなどについて何か納得がいかないところがあるなら、 交通事故専門行政書士の無料相談をご利用ください。