交通事故では、膝に無理な力が加わって半月板損傷・靱帯損傷を起こし、場合によっては関節機能障害などの後遺障害が残ることがあります。
知名度はあまり高くありませんが、手首に慢性的な痛みが残る「TFCC損傷」にも注意が必要です。
TFCCは、外傷および加齢変性に伴い損傷します。例えば、交通事故で転倒した際に、地面に手をついて手首を痛めたり、バイクなどを運転中に転倒して手首を強くぶつけたりしたときなどの外傷をきっかけに、手関節に慢性的な痛みが残ります。また、年齢を重ねるごとにTFCCが変性し、痛みを起こします。
さらに、尺骨が橈骨よりも長すぎたり短すぎたりする場合も痛みが発生します。
症状が悪化した場合、手首を返す動作の制限や握力低下が見られます。
診断の際は、手関節の尺屈テスト、尺屈回外テストなどのTFCCストレステストがあります。画像診断にはMRIや関節造影が使用されます。
また治療には、鎮痛剤投与、サポーター・ギプス固定などの保存療法、部分切除術や尺骨短縮術などの手術療法があります。交通事故で手を怪我した後、手首の痛みがなかなか治まらない場合はTFCC損傷の可能性を疑い、医師の診察を受けることが大切です。
手首の痛みが主体であるTFCC損傷の場合、基本的な認定基準は神経系統の機能障害となります。しかし手関節の可動域制限がある重症例の場合、認定基準は関節機能障害の基準となります。
後遺障害の等級は、「神経症状を残す」後遺障害14級9号の認定が最も多いですが、異議申立てによって12等級が認定される例も少なくありません。
TFCC損傷では12級13号である「頑固な神経症状を残す」後遺障害のみならず、12級6号の可動域制限を残す後遺障害と認定され、より多額の損害賠償を受けられる可能性があります。
後遺障害12級13号の神経症状の逸失期間は、判例より5年から10年程度で症状は改善するといわれておりますが、後遺障害12級6号の可動域制限は、一生残るとされていますので、逸失期間は就労可能年数の67歳で算出されます。よって、同じ後遺障害12級でも可動域制限の後遺障害の方が、逸失期間が長くなる分、逸失利益が増額するので、損害賠償金が高くなります。
医師がTFCC損傷と診断しても、後遺障害等級が非該当となる場合もあります。単純レントゲン撮影ではTFCC損傷が判然としない場合が多いからです。
しかし、TFCC損傷の場合、病院ではレントゲン撮影を行って「異常なし」と診断されても、MRI検査などで異常が発見される場合がございます。
また、交通事故当初は、TFCC損傷に気が付かず、長期間経過後にMRI検査で発見されるケースが少なくありません。
その場合、医師が手首の痛みについて細かくカルテに記載していないと、後で異常所見を証明しても、交通事故との因果関係がないと判断されるおそれがあります。
TFCC損傷は、専門医によるMRI検査や関節造影検査で、損傷を客観的に証明してもらうことが重要です。TFCC損傷と交通事故との因果関係を否定されない為に、交通事故直後から、手首の痛みがあることを医師に伝え、カルテに細かく記載してもらう必要があるのです。
後遺障害専門の行政書士 松浦法務事務所では交通事故後のTFCC損傷、関節機能障害、膝や足首のぐらつき(動揺性・不安定性)などのご相談をお受けしております。関節機能障害の後遺症認定でお悩みの方は、一人で悩まず、是非一度ご相談ください。