高次脳機能とは、大脳のいくつかの領域が共同で行う複雑な精神活動の総称です。
「高次脳機能障害」とは、交通事故などの頭部外傷、脳血管障害や病気による脳の損傷の後遺症として、
脳機能のなかでも高次な機能である。言語障害・思考障害・記憶障害・注意障害・集中力障害・
遂行機能障害・社会的行動障害などの認知障害が生じ、これに起因して、日常生活・社会生活への適応が困難となる後遺障害です。
外見上は回復し平常に戻ったように見えても、社会生活や日常生活の場に戻ると、以前とは違う
「変化」に家族も周囲も戸惑い、事態の深刻さに気づきます。また、一見健常に見えるため周囲の理解が得られにくい場合があり、
また医療・社会福祉の各分野で対応できる施設も少ないのが現状です。高次脳機能障害患者は日常生活だけでなく
社会生活においてもハンディがあるといえます。
交通事故による高次脳機能障害は脳損傷に起因する認知障害全般を指します。この中には
巣症状としての、失語・失行・失認・記憶障害・社会的行動障害、などの症状が含まれます。
高次脳機能障害を、日常生活に例えると下記のようになります。
○ 記憶が悪くなった | ○ 新しいことが覚えられない |
---|---|
○ ぼんやりしている | ○ 話がかみ合わない |
○ もとの自分とどうも違う | ○ お金遣いが荒くなった |
○ イライラしやすくなった | ○ すぐに怒ったり笑ったりする |
○ 無気力になった | ○ 以前出来たことが出来なくなった |
○ 疲れやすく仕事が長続きしない | ○ 転びやすくなった |
○ 不器用になった | ○ 計画立てて物事を実行できない |
「高次脳機能障害」とは、交通事故などの頭部外傷、脳血管障害や病気による脳の損傷の後遺症として、
脳機能のなかでも高次な機能である、言語障害・思考障害・記憶障害・注意障害・集中力障害・遂行機能障害・
社会的行動障害などの認知障害が生じ、これに起因して、日常生活・社会生活への適応が困難となる後遺障害です。
■交通事故により脳の損傷があること
CT、MRIなどの画像による脳の損傷が確認される必要があります。
CT、MRIなどの画像で確認できない場合は、脳血流検査により脳の血流低下
が認められないと、交通事故での証明は困難となります。
■一定期間、意識不明の状態が持続すること
脳障害の場合、意識不明となることがよくあります。この意識不明状態であったかどうかも、
交通事故で高次脳機能障害を発症したと診断する重要な根拠ともいえます。
しかし、意識不明の状態がはっきりしないひと、脳震盪を起こした程度の人でも、交通事故による高次脳機能障害を発症する人もいるようです。
■一定の異常な行動・症状が生じること
高次脳機能障害は、例えばその人の性格の変化したことなどをいいます。その為、被害者本人はその自覚がなく、
親族や身内の人もその発見を遅れることもよく見受けられます。
よって、日ごろの日常生活がおかしいと感じると、神経心理学検査を行う必要がございます。
最も代表的な神経心理学検査は「ミニ・メンタル・ステート・エグザミネーション」(通称MMSE)検査です。
労災補償障害認定必携等に神経系統の機能又は精神の障害に関する医学的事項等として、高次脳機能障害が記載されています。
自賠責保険後遺障害等級認定においても、その殆どは「労災保険障害等級認定基準=厚生労働省労働基準局長通達
(基発第0808002号平成15年8月8日)「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準に準拠するものです。
高次脳機能障害の評価の着眼点
高次脳機能障害は、4能力に係るそう失の程度により評価を行う。
(ア)意思疎通能力(理解力、判断力等) (イ)問題解決能力(理解力、判断力等) (ウ)作業負荷に対する持続力、持久力
(エ)社会行動力(協調性等)
障害は、障害なし・多少の困難はあるが概ね自力でできる・困難があり多少の援助があればできる・困難が著しく大きい・できないと
7つの段階に分類されています。
自賠責保険における脳外傷による高次脳機能障害は、脳の器質的損傷によるもので、等級認定は
事故による脳損傷の有無、障害の内容・程度の判断の2段階に分けて検討されます。
自賠責保険と同様に、高次脳機能障害に着目して研究を行っていた公正労働省が高次脳機能障害支援モデル
事業の一環として公表した診断基準においても、「MRI、CT、脳波など」により器質的損傷が確認される事が用件として挙げられています。
表1:脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方 | ||
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障害認定基準 | 補足的な考え方 | |
介護を要する後遺障害 1級1号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
介護を要する後遺障害 2級1号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、一人では外出することができず、 日常の生活範囲は自宅内限定されている。身体的動作には、排泄、食事などの活動を行うことができても、 生命維持に必要な身辺動作に家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの |
後遺障害 3級3号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 自宅周辺を外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも 日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいこと学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力 などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
後遺障害 5級2号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。たあし新しい作業を学習できなかったり、環境が 変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。この為一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、 就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
後遺障害 7級4号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い。約束を忘れる。ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を 行う事ができないもの |
後遺障害 9級10号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、服する事ができる労務が相当な程度に制限されるもの、 | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの |
自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて。平成12.12.18 |
高次脳機能障害の障害認定は、上記の4能力に係る喪失の程度に応じた認定基準に従って行うものであるが、
別紙高次脳機能渉外整理表は、障害の程度別に能力の喪失の例を参考として示したものである。
意思疎通能力 (記銘・記憶力・認知力・言語力等) |
問題解決能力 (理解力・判断力等) |
作業負荷に対する持続力・集中力 (身体的な持続力を含む) |
社会行動能力 (協調性・攻撃性・易刺激性等) |
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A 多少の困難はあるが概ね自力でできる |
(1)職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる。 (2)必要に応じ、こちらから電話をかけることができ、かかってきた電話の内容をほぼ正確に伝えることができる。 |
(1)さほど複雑でない手順であれば、概ね理解して実行できる。 (2)ある程度抽象的な作業であっても概ね1人で判断することができ、実行できる。 |
概ね8時間支障なく働ける。 | 周囲の人ともほぼ交流ができ、作業や生活に多少の支障しか生じない(変更) |
B 困難はあるが概ね自力でできる |
(1)職場で他の人と意思疎通を図るためにはゆっくり話してもらう必要がある。 (2)かかってきた電話の内容を時々忘れることがある。 (3)普段の会話には何とかついていけるが、文法的な間違いをしたり、適切な言葉を使えないことがある。 |
AとCの中間 | AとCの中間 | AとCの中間 |
C 困難があり多少の援助が必要 |
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることができるが、意味を理解するために時には繰り返してもらう必要がある。 (2)指示がなければ、こちらから電話をかけることができない。 (3)雑談程度の会話の場合でも断片的な単語だけで話すことが多い。 |
(1)手順をなかなか理解することができず、何度も確認することが必要である。 (2)かなり具代的な作業であっても1人で判断することは困難であり、時々助言を必要とする。 |
概ね8時間働けるが、障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督が時々必要である。 | 障害に起因する非常に不適切な行動(攻撃性・不安定性など)が時々認められ、作業や生活に支障が生じる。 |
D 困難はあるが援助があればできる |
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることができるが、意味を理解するためにしばしば繰り返してもらう必要がある。 (2)電話のベルが鳴れば、受話器をとってこちら側の名前・社名は言える。伝言の記憶が不正確で依頼者の名前を思い出すことが困難なことが多い。 |
CとEの中間 | CとEの中間 | CとEの中間 |
E 困難が著しく大きい |
(1)実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示すなどのいろいろな手段と共に話かければ短い文や単語ぐらい理解できる (2)ごく限られた単語を使ったり、誤りの多い話し方をしながらも、何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが、聞き手が繰り返してたずねたり、いろいろと推測する必要がある。 |
(2)手順を理解することは著しく困難であり頻繁な助言がなければ対処できない。 (2)1人で判断することは著しく困難であり頻繁な指示がなければ対処できない |
障害により予定ガの休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない | 障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる。 |
F できない |
職場で他の人と意思疎通を図ることができない。 | 課題を与えられてもできない。 | 持続力に欠け働くことができない。 | 社会性に欠け働くことができない。 |
・後遺障害の結果が非該当の場合や、納得の行かない場合は異議申立てをすることが出来ます。回数には制限が無く基本的に何度でも可能です。
・等級認定通知書には認定理由の記載がありますので、その理由を覆す診断書や資料を添付して自分の望む等級が政党であることの証明をする必要があります。
・やみくもに異議申立てをしても認められるものではありません。
後遺障害の認定は原則、受傷後6ヶ月経過後となりますが、後遺障害の認定の判断には通院回数や主治医のカルテへの記載内容などが重要な要件になります。
そのため、交通事故当初から適切な処置・CT・MRIや日常生活状況検査・知能検査などの適切な検査をしておかないと取り返しのつかない事態になる場合も良くあります。
高次脳機能障害は被害者は自覚症状がない(自分は正常と思っている)場合が多く、被害者の親族も脳に後遺障害のあることを重く受け止め、
ついつい健常者に近い評価をしたり、将来は良くなるはずとの希望を含めて健常者よりの回答を医師にしてしまいます。
その結果、満足のいかない後遺障害の等級となってしまうのです。ですので交通事故当初から相談をされていれば必ず後遺障害の認定が
可能であった事故でも不本意な結果に終わってしまう事も少なくありません。
例えば交通事故後6ヶ月で後遺障害作成の事例では、交通事故当初に必要な画像所見が無く、6ヶ月経過後(当事務所受任後)に取得した
画像所見を添付して後遺障害(異議申立て)の申請を行っても、因果関係自体を否定される場合もございます。
また、非該当な後遺障害の等級に不満がある場合、異議申立ては何度でも可能ですが、被害者の自覚症状を重視する高次脳機能障害では
医師が後遺障害診断書の変更などをとても嫌います。
当事務所は初回無料相談を行っておりますので、行き詰ってからではなく、できるだけ迅速に対処することをお勧めします。
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